ガレット・ブルトンヌGalette bretonne レシピ
galette bretonneガレット・ブルトンヌ

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ガレット・ブルトンヌは、ブルターニュの有塩バターと卵黄をたっぷり使ったバタークッキーです。この記事では、型に入れて厚く焼く形で作ります。フランスでは、この厚焼きのものは「パレ・ブルトン」や「サブレ・ブルトン」と呼ばれることが多い菓子です。同じ「ガレット」でも、そば粉の生地を薄く焼いて卵やハムを包む、ブルターニュの食事のガレットとは別のものです。
外側はさくっと香ばしく、中はほろりと崩れます。バターの塩気が甘さを引き締めます。フランスの製菓材料の通販サイト、メイユール・デュ・シェフのシェフのレシピを軸に、ブルターニュの観光局や料理家のレシピと比べながら、セルクル(底のない輪の型)で厚く焼く手順にまとめました。
ガレット・ブルトンヌとは
フランス語では galette bretonne と書きます。ガレットは「平たく丸い焼き菓子やパン」、ブルトンヌは「ブルターニュの」という意味です。同じ名前はそば粉のガレットにも使われるので、フランス語版ウィキペディアは、この菓子の項目を「ビスケット」と断って立てています。
ただし、この記事のように型で厚く焼いたものは、フランスでは palet breton(パレ・ブルトン)や sablé breton(サブレ・ブルトン)と呼ばれることが多くあります。呼び分けは、下の「ガレットとパレの呼び分け」でくわしく説明します。
ポン=タヴァンの菓子
フランス語版ウィキペディアは、ブルターニュの西の端、フィニステール県のポン=タヴァンを発祥の地としています。1890年に、町のパン職人イジドール・パンヴァンが、有塩バターを使った小さな黄金色のビスケットを作ったとされています。1860年代に人気だったサブレやガトー・ブルトン(ブルターニュのバターケーキ)から着想を得たと説明されています。
パンヴァンが亡くなったあと、未亡人のフランシーヌはアレクシ・ル・ヴィランと結婚しました。ウィキペディアによると、ル・ヴィランは1920年に、ガレットから着想を得て「パレ」を作りました。ガレットもパレも、ブルトン語で「よいもの」を意味する「トラウ・マッド」の名で売られ、いまはブルターニュの多くの菓子工場が作っていると、ウィキペディアは説明しています。
地元コンカルノー・ポン=タヴァンの観光局も、ポン=タヴァンのパレとガレットは1890年から町の食の伝統だと説明しています。また、トラウ・マッドのパレは1920年にル・ヴィランが作ったとしていて、ここはウィキペディアと同じです。
ただし、細かいところは少し違います。観光局は、この仕事はもともと地元のパン職人たちがしていたもので、1890年にパンヴァンが引き継いだと書いています。パンヴァンが最初に作ったとは書いていません。また、トラウ・マッドの登録商標の商品「ガレット・ド・ポン=タヴァン」は、ル・ヴィランの娘マルグリットが1950年に作ったとしています。これはブランドの商品の始まりで、ガレットという菓子そのものの始まりとは別の話と読めます。菓子を最初に作ったのが誰かは、情報源によって書き方が違い、言い切れません。
フランス観光開発機構のサイトは、菓子工場の職人たちが、地理的表示保護(IGP、産地の名前を守る制度)の申請を出したと説明しています。フランス語版ウィキペディアは、ガレットとパレの両方について、2012年から申請が出されているとしています。認定されたかどうかは、この記事のために読んだ情報源では確かめられませんでした。
ガレットとパレの呼び分け
パレ・ブルトンの名前について、フランス観光開発機構のサイトは、形がブルターニュの遊び「パレ」で投げる金属の円盤に似ていると説明しています。ブルターニュの観光局のレシピも、パレを黄金色でしっかりと厚い菓子として紹介しています。コンカルノー・ポン=タヴァンの観光局は、トラウ・マッドのパレを食べごたえのあるものとして、ガレット・ド・ポン=タヴァンをこんがりと焼けてカリッとしたものとして、書き分けています。
この記事のために読んだフランスのレシピのうち、セルクルや型に入れて厚く焼くものは、「パレ」か「サブレ・ブルトン」と呼ばれていました。抜き型で抜いて天板でそのまま焼くものは、「ガレット」や「サブレ」と呼ばれていました。厚く焼いたものを「ガレット」と名づけたレシピは、読んだ中にはありませんでした。ただし、料理家ベルナール・ローランスが引用するポン=タヴァンの製造元の説明は、トラウ・マッドを、バターと風味の豊かな厚いガレットとしています。呼び分けは厳密に決まったものではありません。この記事では、日本で通っている呼び名「ガレット・ブルトンヌ」を記事名にして、フランスでいえばパレ・ブルトンにあたる、厚焼きの形で作ります。
この記事の配合
メイユール・デュ・シェフのレシピは、粉175gに対して砂糖125g、バター125g、卵黄60g、ベーキングパウダー8gです。料理家メルコットのレシピも、粉に対する砂糖・バター・卵黄の割合が近いものでした。メイユール・デュ・シェフは食塩不使用バターに塩を足していますが、ほかのレシピの多くはブルターニュの半有塩バター(ドゥミ・セル)を使います。この記事は有塩バターを使います。メルコットのレシピが、半有塩バターにさらにフルール・ド・セル(粒の粗い塩)をひとつまみ足しているのにならい、この記事では1g足しました。
ポン=タヴァンのトラウ・マッドは直径5.5cmの輪で焼かれていると、料理家ベルナール・ローランスは書いています。この記事は日本で手に入りやすい直径6cmのセルクルを使うので、1個の面積はおよそ1.2倍になり、そのぶん、できる数は少なめになります。
ガレット・ブルトンヌのレシピ:材料(直径6cmのセルクルで約18個)
生地づくり 1時間30分(生地を冷蔵庫で1時間休ませるのを含む)焼き 約1時間15分(6個ずつ3回に分けて焼く場合。1回15〜20分と、セルクルを冷ます時間を含む)難しさ ふつう
生地
作り方
下準備をする
有塩バター125gとセルクル用の有塩バター5gを室温に置き、指で押すとすっと入るやわらかさにする。電子レンジなどで溶かさない。薄力粉175gとベーキングパウダー8gを合わせてふるう。
卵黄と砂糖を泡立てる
ボウルに卵黄60g、グラニュー糖125g、フルール・ド・セル1gを入れ、泡立て器で2〜3分、白っぽくもったりするまで混ぜる。
バターを混ぜる
やわらかくした有塩バター125gを加え、泡立て器でなめらかになるまで混ぜる。
粉を合わせる
ふるった粉とベーキングパウダーを一度に加え、ゴムべらで切るように混ぜる。粉気がなくなり、ひとまとまりになったら止める。練らない。生地には生の卵黄が入っているので、焼く前に味見はしない。
7mmにのばして冷やす
オーブンシート2枚の間に生地をはさみ、両側に厚さ7mmのルーラーを置いて、めん棒で均一な厚さにのばす。シートごと天板かバットにのせ、冷蔵庫で1時間以上冷やして固める。
セルクルとオーブンの準備
オーブンを180〜190℃に予熱する。セルクルの内側に、やわらかくした有塩バター5gを指か刷毛で薄く塗る(3回分をまかなう量なので、1回ごとにごく薄く)。天板にオーブンシートを敷く。
セルクルで抜いて並べる
冷えた生地の上のシートをはがし、セルクルを押し当てて抜く。抜いた生地はセルクルに入れたまま、天板に3cm以上の間隔をあけて並べる。フォークの先で表面に浅く格子の筋をつける(筋はつけなくてもよい)。焼く順番を待つ生地は冷蔵庫に戻す。抜いた残りはまとめて同じ7mmにのばし、冷蔵庫で20〜30分冷やしてから抜く。
焼く
180〜190℃で15〜20分焼く。生地はセルクルの中で上にふくらむ。表面全体がこんがりとした黄金色になり、縁がやや濃い色になったら焼き上がり。中央に白っぽさが残っていたら、2〜3分ずつ焼き足す。
温かいうちに型から外す
天板とセルクルはとても熱いので、オーブンミトンをつけて取り出す。2〜3分おき、まだ温かいうちに、セルクルの内側に沿ってナイフをぐるりと一周させ、生地を上から軽く押してセルクルを持ち上げて外す。焼きたては崩れやすいので、そっと網に移して完全に冷ます。次を焼くときは、セルクルが手で触れるまで冷めてから、残りのバターを薄く塗り直す。
ブルターニュの観光局は、パレを、おやつの時間(グーテ)やコーヒーに添えるのにぴったりの菓子として紹介しています。紅茶にもよく合います。卵白が3個分余るので、フィナンシェなどに使います。
料理科学:卵黄をたっぷり使う理由
卵白の水分を入れず、グルテンを育てない
日本食品標準成分表によると、卵黄は100gのうち水分が約50g、脂質が約34gです。一方、卵白は約88gが水分で、脂質はほとんどありません。
小麦粉のたんぱく質は、水を得てこねられると、つながってグルテンという弾力のある網目を作ります。パンには必要ですが、この菓子では網目ができるほど、かたく締まった食感になります。全卵の代わりに卵黄だけを使うと、生地に入る水分が少なく、脂肪は多くなります。砂糖もバターと同じくらい多く、砂糖は水を抱え込むので、グルテンはさらにできにくくなります。そのため、焼き上がりはさくっと軽く、口の中でほろりと崩れます。手順4で練らずに混ぜるのも、グルテンを育てないためです。
卵黄が生地をまとめ、焼き色をつける
卵黄にはレシチンなど、水と油をなじませる乳化の働きを持つ成分が含まれます。手順2で卵黄と砂糖をよく混ぜてからバターを加えると、バターの脂が生地全体になめらかに散り、分離しにくくなります。
卵黄のたんぱく質は、焼くと生地の糖とメイラード反応(たんぱく質のアミノ酸と糖が熱で反応して、色と香りが生まれる反応)を起こします。卵黄の多い生地は、表面がこんがりとした黄金色になります。
料理科学:セルクルで焼く理由
バターの多い生地は横に広がる
この生地は、粉の重さのおよそ7割のバターを含みます。オーブンに入れると、卵のたんぱく質が熱で固まる前に、バターが溶けて生地がやわらかくなります。そこへベーキングパウダーのガスが加わるので、型なしで焼くと生地は横に広がり、薄く平らになります。
フランスのウェブメディア、デモティヴァトゥールのレシピは、パレが焼くあいだに広がらないように、セルクルやマフィン型に入れて焼くとしています。メイユール・デュ・シェフのシェフも、型が生地を支えるので、どれも同じ形に焼き上がると説明しています。セルクルの中では生地が横に逃げられず、上にふくらんで、側面がまっすぐな厚い形になります。
冷やしてから抜き、温かいうちに外す
のばした生地を冷蔵庫で冷やすのは、やわらかくなったバターを固め直すためです。冷えた生地はセルクルできれいに抜けて、焼き始めに溶けて広がるのも遅くなります。
料理家メルコットのレシピは、焼き上がってすぐ、まだ柔らかいうちに、ナイフを回して型から外しています。冷めるとバターと砂糖が固まって、セルクルにはりつきやすくなるためと考えられます。ただし焼きたては崩れやすいので、この記事では2〜3分おいてから外します。
ブルターニュの有塩バターと日本の有塩バター
フランスの消費者団体の雑誌ク・ショワジールによると、フランスでは、100gあたり塩が0.8〜3gのバターを「ドゥミ・セル(半有塩)」、3g以上のものを「サレ(有塩)」と呼びます。塩を加えていない(または100gあたり0.5g未満の)バターは「ドゥ(甘い、の意味)」です。同誌は、もともとバターは保存のために塩をしたものだと説明しています。この記事で参考にしたフランスのレシピの多くは、ドゥミ・セルを使っています。
日本食品標準成分表では、日本の有塩バターの食塩相当量は100gあたり1.9gです。これはフランスのドゥミ・セルの範囲に入ります。日本の有塩バターをそのまま使えるのはそのためです。ただし製品によって塩分は違うので、包装の「食塩相当量」を確かめます。100gあたり1.5gより少ないものなら、足すフルール・ド・セルを1.5gにします。
塩は甘さを引き締め、バターの風味をはっきりさせます。粒の粗いフルール・ド・セルは、溶けきらずに残った粒が、ところどころで塩気を感じさせます。
手に入りにくい材料の代用
- ブルターニュのドゥミ・セル:日本の有塩バターで代用できます。上の節のとおり、塩分はドゥミ・セルの範囲に入ります。食塩不使用バターしかないときは、食塩不使用バター125gを使い、フルール・ド・セルを3.5gにします(有塩バター125gに含まれる塩約2.4gに、足す1gを加えた約3.4gを丸めた計算です)。
- フルール・ド・セル:普通の塩を同じ重さで使えます。粒が細かいぶん、塩気は生地に均一になじみます。
- フランスの T55 の小麦粉:日本の薄力粉で代用します。
- フランスのベーキングパウダー(levure chimique):日本のベーキングパウダーを同じ重さで使います。
- セルクル:フランスのレシピには、マフィン型やタルトレット型で焼くものもあります。型にバターを塗り、抜いた生地を底に平らに入れて焼きます。型の大きさが違うと厚みが変わるので、焼き時間は見極めで調整します。
失敗したときは
- 生地がべたついて、のばせない・抜けない:バターが溶けかけていたか、室温が高かったことが考えられます。ブルターニュの観光局のサブレのレシピも、バターは柔らかくするだけで、決して溶かさないようにと書いています。生地をシートにはさんだまま冷蔵庫で冷やし直します。
- セルクルの下から生地がはみ出し、形がくずれる:生地がぬるくなっていたことが考えられます。抜いたらすぐに焼くか、天板ごと冷蔵庫で冷やしてから焼きます。天板が平らでないと、セルクルとのすき間から生地が流れ出ることもあります。
- 外側は濃い色なのに、中が生っぽい:オーブンの温度が高すぎた可能性があります。次は10℃下げて、焼き時間をのばします。
- 型から外すときに割れる・はりつく:熱すぎるうちに外すと割れ、冷めすぎるとはりつきます。2〜3分おいて、温かいうちにナイフを一周させて外します。セルクルのバターが足りないときも、はりつきやすくなります。
保存
- 常温:完全に冷めてから、密閉できる缶や容器に入れ、湿気を避けて保存します。メイユール・デュ・シェフのシェフも、よく日持ちする菓子だとしています。この記事の目安は1週間です。
- 湿気たとき:この記事の目安として、150℃前後のオーブンで数分温め、網の上で冷ますと、さくっとした食感がいくらか戻ります。焦げないように様子を見ながら温めます。
フランスのほかのレシピ
もっと知りたい人へ
出典
- Meilleur du Chef「Sablés breton」(フランス語)
- Mercotte「Minis entremets aux fraises sur sablé breton」(フランス語)
- La Cuisine de Bernard「Traou Mad de Pont Aven, ma recette」(フランス語)
- Tourisme Bretagne「Palets bretons」(フランス語)
- Tourisme Bretagne「La recette des sablés bretons」(フランス語)
- Demotivateur「Cette recette de palets bretons traditionnels va enchanter vos papilles !」(フランス語)
- Demotivateur「Réalisez des galettes bretonnes au beurre salé !」(フランス語)
- Meilleur du Chef「Galette bretonne」(フランス語)
- Wikipédia「Galette bretonne」(フランス語)
- De Concarneau à Pont-Aven「Biscuiterie Traou Mad」(フランス語)
- De Concarneau à Pont-Aven「Biscuit factories in Pont-Aven」(英語)
- France.fr「À vos fourneaux : 4 goûters aux saveurs de la Bretagne」(フランス語)
- Que Choisir「Comment choisir son beurre」(フランス語)
- 食品成分データベース(文部科学省)「無発酵バター 有塩バター(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)」(日本語)
- 食品成分データベース(文部科学省)「鶏卵 卵黄 生(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)」(日本語)
- 食品成分データベース(文部科学省)「鶏卵 卵白 生(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)」(日本語)
本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。